夢里村

アー

山でヤマアラシをケバブにして食べた話

f:id:yumesatomura:20181027085052j:image

 

イラン滞在3日目、今日は狩りに行くぞと告げられ、後輩の従兄弟シャーロムの床がすげー広い家で寛いでた。暑い地域なので冷房がありえないぐらい作動してた。謎のミントのジュースとか飲みながら寛ぎすぎてこんな流れで狩りに出るか?と思っていたら夕方いきなり車に乗れと言われた。ぼくらの車の他にもう一台いて、知らない屈強な男が2人立っていた。Gachsaranから2.3時間くらい走らせた、山入ってからも1時間弱走ってた気がする、途中熟したナツメヤシを食わされた。イラン人はこのナツメヤシがかなり好きらしい、ベタベタのあんこの塊みたいなクソ甘いやつだ。キアヌシュペルシャ語と日本語の翻訳アプリを起動させだしたから、とりあえずaっていれたらab(アップ:水)が出てきてabという単語を覚えた。山入ってからなんか車が動かんくなって絶望しながらみんなで押した。上みたら星がすごいことになってたけど坂で車押してすごい疲れたからあんまり気にしなかった。

山いつまで走ってんの?と思ってたら屈強な男たちが車の中から懐中電灯とかで外を照らして獲物を探し出した。こんな雑に見つからねえだろという気持ちだった。拠点が決まったら、火起こし班と狩り班に別れた。ていうかテント張り出して泊まる気まんまんで、歯ブラシ持って来てないしとか思った。ぼくは4人の狩り班の1人で、水担当だった。空の2リットルペットボトルを持たされた。

獲物に気づかれないよう、基本明かりはつけないで移動、暗すぎて意味わかんなかった。途中謎の蛇口を発見してペットボトルに水を入れた。何してるのか意味がわからなかった。しばらく歩いてたら急に屈強な男ハサンが銃をぶっぱなして叫びながら走り出した。わけがわからなかったけど獲物がいたんだというくらいは理解し、ビデオを撮らなきゃと思って、持たされてた邪魔な水をそのへんに捨てて斜面を下った。ヤマアラシがいて、そのそばにはハサンとアハマドがいた。ヤマアラシは手に弾が当たってもう逃げようとしていなかった。のそのそしていた。ぼくはとりあえずカメラをまわした。ヤマアラシは背中とケツについてる針を揺らして音を出して威嚇したり、後ろ向きで突進して攻撃しようとしたりしていた。しばらくハサンとアハマドがヤマアラシをつついたりしていた。完全にヤマアラシはもう終わってた。アハマドはこん棒を持っており、それで殴り殺す算段だというのは車の中で聞かされていた。ぼくは怖くなってヤマアラシにズームしまくって画面を黒で埋めてしまった。はっとしてズームアウトして少しすると、アハマドがヤマアラシをぶん殴った。ヤマアラシは横に倒れてぶるぶる震えて、針がカラカラと鳴った。アハマドは確実に倒すため数回頭をしばいた。そのたびにヤマアラシはびくんと体を揺らした。

土本典昭不知火海』を見せられながら、カメラマンの感情の没入とともに被写体にズームしてしまうこと、その抑制、鑑賞者の意識をそらすためのパンなどの話を聞かされたことがあった。運動会とかでね、親御さんはすぐズームしちゃうんだよ、そのまんま据え置きでやるのが一番いいのに とか言ってた。ぼくはフレームの外を排除するように、無意識に対象の像をぼやけさせていった。びびっていた。

そのあとはヤマアラシの首を切った。気道からぷしゅぷしゅ音がしてた。そんで水をくれ!って言われた。abを覚えてたのが役に立った。ああ、このときのための水だったのか。あれ、水ないじゃん。ぼくが投げ捨てた水をみんなで探した。アハマドはみんなが何かを探し出したからまた獲物がいたと思ってがんばってヤマアラシを探していたらしい。

 

ケバブはまあまあ美味しかった。