夢里村

アー

息あんまできない

ピザ屋の窓辺の席でハイボールを飲みながら本を読んでいた。だんだん暗くなる一番いい時間帯だった。でも曙も一番いいな? 一番ってたくさんある。木がたくさんある大通りだから風が見えて、いつまでもぼうっとできていた。街頭が灯る瞬間はいつも感動的だ。あれは人間が夜を発明したことだ。自然が人間より上位だとなんとなく思っていたけど、建築とかアートを見ているとそうでもないなと感じるし、そもそも人間や自然のどっちがすごいとかそういう話ではないという当たり前のことに思い当たる。ガス燈に火をいれる瞬間を見てみたかった。オリヴェイラの『Um Século de Energia』とか、スックスドルフの『街の人たち』を観て強くそう願った。いまスックスドルフで検索をしたら『二人だけの白い雪』とかいうめちゃくちゃ良いタイトルの映画を発見した。

人に呼ばれたので店を出て自転車を漕いでいると、走る少年とすれ違う。純粋な走りだ。5分後にまた電車は来るのにいま来ているそれに卑しく間に合わせようとする走りとは全く違う。走るために走っている感じ。あれには何も敵わない。目的性のなさだけがいつも美しい。あのように走ることができない諦念や悲しみを乗り越えて明日も早起きをがんばる。なんの目的もなく薄暗い中鐘の鳴るあの時間に目覚めることができたらどんなに……。

 

今日は少し手を伸ばしたくなるさらさらの雨が降っていたな。
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